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耳は外耳、中耳、内耳の3つから成っている。外側に突き出ている耳介と外耳道を外耳、外耳道の先につながる鼓膜・耳小骨・中耳腔を中耳と呼ぶ。
一方、中耳腔の奥の部分が内耳で、ここは、カタツムリの形をした蝸牛と、三半規管・耳石器からなる前庭がある。このうち蝸牛は、鼓膜でとらえて内耳に伝達された外界の音(振動)を聞き取るところ。
また、前庭の中の耳石器は体の位置と直線的な加速を、三半規管は体の回転による加速をそれぞれ感じ取り、体のバランスを保つ働きをしている。なお、耳は耳管から辿り、のどや鼻を通して外界と接している。こうした耳の構造から起こりやすい病気の第一は、鼻やのどから持ち込まれた細菌やウイルスの感染によって生じる中耳の炎症。そして、更年期前後から目立つ難聴やメニエール病など内耳の病気である。



急性中耳炎

●症状
かぜをひいた後や、鼻を強くかんだ後に耳が痛む。発熱することもある。症状が重いと脈を打つようにズキンズキンと痛み、軽い難聴を起こすこともある。

●原因
鼻やのどを通って、耳管からかぜの原因となる細菌やウイルスが感染し、中耳に炎症を起こしたもの。高齢で耳管が詰まり気味の人が強い勢いで鼻をかんだり、飛行機に乗って急激な気圧の変化にあうと、中耳が刺激され炎症を起こすこともある。

●治療
激痛のある時や難聴を起こしている時は、鼓膜を切開し、膿の混じった耳だれ(耳漏)をきれいに吸引し、抗生物質を投与する。鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎などを起こしている時は、その治療を先行させる。1週間もすれば治るが、きちんと治療しないと、耳の中に滲出液がたまり、軽い難聴を伴う、滲出性中耳炎になることがある。その際は鼓膜切開や鼓室穿刺を行い、滲出液を排出させる。




外耳炎

●急性限局性外耳道炎
海水浴やプールで汚い水が耳の中に入ったり、耳掃除の際に小さな傷をつくつた際、外耳の毛嚢や耳垢腺に細菌が感染して炎症を起こしたもの。耳を触ったり、物を噛んだりすると痛む。重症の場合、膿のかたまりが外耳にできることがある。これを耳せつという。治療は、抗生物質や消炎鎮痛剤を内服し、抗生物質の軟膏を塗る。

●外耳道湿疹
耳掃除による小さな傷や、化粧品やヘアカラーなどの刺激により、外耳道にできた湿疹。最初は耳の中がかゆい程度だが、やがて痛みも伴い、多量の耳垢や耳だれが出る。治療は、副腎皮質ホルモンの軟膏を塗り、抗ヒスタミン剤を内服する。

●真菌性外耳道炎
耳掃除による傷がある場合や、海水浴やプールで耳の中に入った水を放置して外耳が湿った状態の時、カンジダなどのカビが感染して生じる。耳が詰まった感じがあり、耳垢が多量に出る。耳鏡検査でチェックし、真菌性なら抗真菌薬を塗る。





難聴

●老人性難聴
老化現象の1つで、内耳の感覚細胞や聴覚に関連する神経などの組織が萎縮するために生じる。音は聞こえているが会話が聞き取りにくく、聞き間違えたり、聞き返しが増えてくる。通常の聴力検査に加えて、言葉の聞こえを調べる語音明瞭度検査などから診断をつける。これといった治療法はなく、日常生活に差し支えるようなら補聴器を使用する。音がまったく聞こえない際の治療としては、人工内耳埋め込み術がある。

●突発性難聴
ウイルス感染や内耳の血管障害などの説もあるが、原因ははつきりしない。突然、片方の耳(まれに両耳)が聞こえなくなる。その前後に耳がふさがった感じや、天井がぐるぐる回る回転性のめまいが起きることがある。治療にはステロイド剤、血管拡張築、抗凝固簗、ビタミン剤などを使用。1週間以内に治療を開始することがもっとも重要で、完全に聴力を取り戻せることも少なくない。

●心因性難聴
小学校低学年の女子に多く見られる。実際には音が聞こえているのに、検診の際に両耳または片耳の難聴が見つかる。精密検査をしても実際の聴覚機能に異常はみられない。カウンセリングを受けながら精神的な背景を探り、心の問題を解決することが時に必要となる。




メニエール病

●症状
突然、天井がぐるぐる回るような激しいめまいに襲われ、耳鳴りや耳がふさがったような感じの難聴を伴う。発作は30分から数時間にわたって繰り返し起こる。冷や汗、吐き気・嘔吐、頻脈、顔面蒼白などの症状が出ることも少なくない。

●原因
内耳にリンパ液がたまる内リンパ水腫が原因とされるが、なぜ起こるのかははっきりしていない。ストレスが引き金になることが多い。

●治療
めまいに対しては鎮暈剤や精神安定剤、吐き気には吐き気止め、内リンパ水腫には利尿剤というように病態に応じた治療を行う。内耳の働きを良くするために、ビタミン剤や末梢血液改善薬なども用いる。





日本医療企画「ホスピタウン」より



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