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のどは咽頭・喉頭、口腔は、唇・舌・上あご・下あごから成っている。これらの器官は、食べ物を噛み砕いて唾液と混ぜ合わせ、食道に送り込む消化管としてだけでなく、空気を出し入れする気道として、または声を作り出す発生器として、重要な働きをしている。人ののどの構造はほかの哺乳動物と同じだが、はかの動物と違うのは、直立しているため鼻だけでなく口でも呼吸ができることだ。しかし、口での呼吸は不自然で、外界の細菌やウイルス、ほこりや汚染物質を吸い込むと咽頭炎や扁桃炎などの炎症を引き起こしやすい。
このほか、カラオケなどで声を張り上げることが多い現代では、歌手や声楽家、声優など声を売り物にする人だけでなく、一般の人でものどの病気である声帯ポリープができやすい。もちろん喫煙を原因とする喉頭がんや咽頭がんへの注意も必要。



咽頭炎

●急性咽頭炎
咽頭の粘膜に炎症が起きたもの。のどかぜとも言われるように、かぜの一症状でもある。のどの突きあたり部分が赤く腫れ、異物感やヒリヒリした痛みを覚え、ひどい場合にはモノが飲み込みにくくなることもある。発熱が見られ、全身の倦怠感もある。
原因は、ウイルス感染によるかぜに、二次的細菌感染が生じたこと。抗菌薬や非ステロイド性抗炎症薬を使用し、プロタゴールを塗布したり、うがいで炎症を鎮める。

●慢性咽頭炎
急性咽頭炎が慢性化したもの。喫煙、お酒の飲みすぎ、ほこりっぽい空気を吸い込んだ際の刺激、口呼吸などが原因となる。急性咽頭炎のような強い症状はないが、口の中が常にいがらっぽく、気分がすぐれない。発熱はないが変なせきが出ることもある。咽頭の後璧が赤く充血していたり、顆粒状のボツボツがあったりする。禁煙、節酒、環境の整備などで原因を取り除くことが一番。日々の努力以外に決定的な治療法はないので、うがいを心がけ、のどがヒリヒリするようなら急性咽頭炎と同じ治療をする。




扁桃炎

リンパ組織が集まって
できた扁桃は、本来鼻や口から吸い込まれた空気の病原菌をとらえて無害化する役割を担っていたものと考えられている。かぜをひくとのどが赤くなるのは扁桃が病原菌と戦っているせい、と形容することもできる。咽頭炎のうち口蓋扁桃が激しく冒されている状態を扁桃炎という。

●急性扁桃炎
40度前後の発熱があり、のどが痛み、全身がだるいなどの症状がみられる。食欲はなく、関節のほか耳の下あたりが痛むことがある。扁桃の粘膜が赤く腫れ、症状が重いと膿が扁桃を覆うこともある。油断をすると脱水症状を伴うので、水分の補給が大切。抗生物質と消炎鎮痛葉で治療する。

●習慣性扁桃炎
急性扁桃炎を繰り返しているうちに、かぜをひくとすぐに扁桃を腫らすようになることがある。炎症を起こしやすくなるだけでなく、その症状も重い。子どもに多く見られるが30代くらいの大人にも発症する。たびたび扁桃炎を繰り返すようなら、扁桃を摘出すれば、扁桃炎にかからなくなるか、かかっても症状は軽くなる。なお、扁桃をとると免疫が低下する、などといった、かつて懸念されたような事実はない。




声帯ポリープ

●症状
声帯は粘膜で覆われた左右2枚のひだ。発声する時には両側とも閉じており、隙間から息を吐き出す際に声帯が振動することで声が出る。この声帯にできる良性腫瘍が声帯ポリープで、左右どちらか片方にできることが多い。しわがれ声がひどく、のどに異物感を感じる、という症状がある。

●原因
無理な発声を原因とするケースが一番多い。喫煙、飲酒などは症状を悪化させる。

●治療
喉頭をファイバースコープで検査し、ポリープが小さい場合は声を出さないように注意する。消灸剤を吸入したり内服することで治癒することが多い。一万、大きい場合は、内視鏡下喉頭微細手術を行う。ポリープががんになることはないが、症状そのものは声帯がんと紛らわしい。かぜをひいていないのに、声がれが1ヶ月以上も続くような時は、精密検査を受けよう。




喉頭がん

●症状
喉頭がんのうち、70%は声門がん、25%が声門上がん、5%が声門下がんと言われる。早期発見すれば治りやすいがんである。声門がんには、しわがれ声やかすれ声、声が出しにくいという症状が、声門上がん・声門下がんではのどの異物感や違和感がある。

●原因
喫煙が最大の原因だが、過度な飲酒も原因となる。

●診断
喉頭鏡や喉頭ファイバースコープなどで調へるとともに、組織を検査して診断をつける。がんとわかれば、CTやMRIでがんの進行状態を調へる。転移の頻度は少ないが×線検査、骨シンチなどでチェックする。

●治療
早期の場合はレーザー手術と放射線治療を併せて行う。進行している場合には喉頭の部分摘出手術を行う。




上咽頭がん

●症状
耳がふさがれたような感じ、難聴や耳鳴りなど耳の症状と、鼻づまりをはじめとする鼻の症状がある。原因不明の頸部リンパ節の腫れが初発症状となることもあり、頭蓋底にまでがんが進行すると、偏頭痛・頭重感に加えて目の動きが悪くなるなど脳神経症状を現すことも。

●原因
鼻や耳の検査を行い、生検による組織検査で診断する。ただし原因不明の頸部リンパ節の腫れが初発症状の場合、上咽頭がんと判明するまでに時間がかかることもある。がんと診断されたら、頭蓋底骨が冒されているかどうか進行状態を知るためにCTやMRI検査を行う。転移をチェックするために、X線検査、骨シンチなどで全身の検査も行う。

●治療
手術で完全にがんを切除することは場所柄難しいので、放射線治療、抗がん剤を併用する。





日本医療企画「ホスピタウン」より



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