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新聞やテレビのニュースで毎日のように報道される医療事故。
誰が被害者になっても不思議ではない現在、自身や家族の身を不幸な出来事から守るためには病院で行われる医療に関心を持つとともに医療ミスを防ぐ心構えや行動が必要となる。
医療ミスに遭わないための心得と、万が一、遭ってしまった際の対処法について紹介します。



報道される医療事故は全体のごく一部

死亡率は数%。安心してください」という医師の言葉を信じて手術に同意したが、手術中に容体が急変。大切な家族は還らぬ人に。その後、手術中に医療事故が起こっていたことが判明する。
まるでドラマの一場面のような話だが、決して人ごとではない。今年4月に報道された医療事故の数は28件。1日に1件ずつ日本のどこかで事故が起きている計算になるが、この数字は氷山の−角。実際に起きている医療事故のごく一部に過ぎない。
医療ミスについて研究し、講習会などを開いている医療マネジメント研究所主任研究員の乗越勇美さんは、「医療ミスに関する報道を数多く耳にすることで、一般の人は『医療ミスが増えている』というイメージを抱くかもしれませんが、実際には、これまで潜在的に勃発していた医療ミス・事故の数々がマスコミや国民の注目を集めて表面化したに過ぎません。現在、医療界は、個々の病院レベルでリスクマネジメント委員会や安全管理委員会を設置し、医療ミスの実態を積極的に公開するなど、その防止に向け積極的に取り組んでいます。こうした努力によってミスそのものはむしろ減少に転じていると考えられます」と推察する。



医師の技術不足による事故も

しかし、病院がいくら努力しても、医療が人間によって行われる以上、医療ミスがなくなることはない。これまでに報告されているミスを原因別に見ると、確認不足が約30%、観察ミスが約15%、心理的条件によるミスが14%、勤務状況を要因とするものが約10%、患者・家族への説明不足によるミスが6.6%と続く。大部分が医療提供者側のヒューマンエラーによるものだ(医療マネジメント研究所調べ)。
2004年に高知日赤病院で起こった医療ミスは「確認不足」の典型例だ。この事故は、呼吸不全の60代の患者に行う気管切開手術を誤って80代の患者に実施。手術から1カ月後に死亡した、というもの(高知署は司法解剖の結果などから患者の死亡と気管切開に因果関係はないと断定)。執刀医師や看護師が、患者のリストバンドに書かれた名前や顔を確認しなかったことが原因だった。
確認不足に陥る要因としては、「医療現場は慢性的な人手不足で、医療従事者一人ひとりの負担が大きすぎる」「規模の大きい医療機関はど、各スタッフのコミュニケーションが不十分になりやすい」などの問題が指摘されている。
また、「医療知識や技術の未熟性」による事故もある。ほとんど経験のない未熟な医師が、前立腺がんの患者に技術的に難しい腹腔鏡手術を行い、その結果死亡させた「慈恵医大青戸病院事件」がよく知られている。



ミスが起きても事故を回避する姿勢が大切

もっとも、「医療ミス」に定義については、難しい面もある。「医療ミス、イコール医療の間違い」「治らなければ医療ミス」と思い込む人も多いが、医師が「この手術は○%の成功率。このような危険性がある」などと患者が納得できるように説明し、成功率を高めるように努力していた場合は、仮に術後に患者が死亡しても医療過誤にはならない。問題とされるのは、「医師がプロとして当然行うべき処置を怠ったり、危険を回避する義務を怠った」というケースのみだ。
ミスそのものは、医師も医療スタッフも人間である限り、日常茶飯事的に起こりうる。ミスが生じても「事故」に至るのを回避するため、最善の努力を行うことが大切なのである。
医師は治療を行う際、「病気・ケガを必ず治す」と言っているわけではない。患者の治癒を助けるため、プロとして最大限の努力を行うのが使命だ。医師や看護師が先端技術の習得に励み、ミスを起こさないように自助努力することはもちろんだが、患者自身が「自分も病気を治すスタッフの1人」という意識を持ち、ミスの発生を未然に防ぐための注意を欠かさないことも大切だ。そのための心構えを解説していく。



医師任せにしない心構えを持つ

病気やケガをした時は、病院に行けば治してもらえる」というのが、病院に対する一般的なイメージだろう。医師の言葉すべてが正しく、安全のように感じられ、「先生にお任せします」という気持ちも生まれてくる。しかし、こうした考えそのものに問題があると指摘する。「病院は、メスなどの体を傷つける器具や薬品が数多く存在する、ある意味危険な場所と、まずは認識することです。人間には自然治癒力が備わっていますので、病気やケガをしてもその力で治すことが理想的ですが、重症化すればするほど難しくなる。自然治癒力で治せない時に、専門的な知識や技術を持つ医師の力を借り、あえて手術などの危険性の高い治療を受けるのだ、と考えてみてください。そうすれば、医師の説明を聞く時や治療を受ける時の注意力も高まるはずです」




医療ミスの遭わないための注意点

誤診を防ぐ

  • 既往症、常用している薬、症状をすべて伝える(問診表に書いていても、さらに口頭で確認する)
  • 診断の根拠を聞く
  • 治療法を理解する(治癒率、回復率、危険度、後遺症も含めて、プラス面とマイナス面の両方を聞く)
  • 担当医の実績を聞く
  • 別の病院でも診察を受ける

ミスを探す・事故を防ぐ

  • 薬効、使用法、禁忌などを聞いて理解する
  • 投与される薬剤名を自分で確認する
  • 点滴ボトルに記載された氏名、薬剤名、日時、分量、滴下スピードの確認

その他

  • 医師や看護師も、自分と同じ人間であることを認識する
  • 病を治す主役は自分であることを意識する
  • 「完全看護」と言っても、医師や看護師は多数の患者を担当しており、1人の患者へのサービスはタイムシェアリングでしか行われない。従って、患者からナースコールができない時は、容体の変化に気づいてもらえない場合があることを知っておく
  • 病院ランキング本などの情報をうのみにしない



日本医療企画「ホスピタウン」より



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