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ケース1 説明を怠って手術後に後遺症

鹿児島県のA病院で三叉神経痛の手術を受けた女性が、術後に聴覚障害などの後遺症を負った。女性は医療訴訟を起こし、鹿児島地裁は「女性の損害は病院の責任による」と認定した。
判決理由で裁判長は、「病院側が手術の危険性を原告に告げていなかった」ことを重視。「説明義務違反がなければ、原告は手術を受けなかった」と指摘した。聴覚や平衡機能に障害を負い、転倒して骨折したり、頭痛やうつ病に悩まされているとの訴えの大半に、手術との因果関係を認めた。病院側は説明義務違反は認めたが、手術中に神経を傷つけるなどの過失はなかったと反論していた。

チェックポイント
これは、医師が患者に「治療について説明する義務を怠った」という医療過誤が認められたケース。医師には、治療について予想できる限りの危険性や後遺症について説明する義務がある。こうした事故を回避するためには、患者も事前に手術の危険性や成功率、後遺症が残るとしたらどんなものがあるか、などを確認しておく必要がある。




ケース2 子どもに大人用の薬剤を点滴

大阪府のB病院で1日に3回、気管支拡張剤「アミノフィリン」の点滴を受けていた9ヵ月の女児の容態が、ある日の点滴後、高熱を発するなど突然急変。その日のうちに大阪市内の病院へ転院させたところ、女児の血中から通常量の約3〜5倍のアミノフィリンが検出された。女児はアミノフィリンの影響による脳症のため死亡した。B病院は「誤って大人用の高濃度の拡張剤を点滴した」と医療ミスを認め、「点滴のボトルの取り違えか、調合時のミスで高濃度の拡張剤を投与した」と脱明している。

チェックポイント
薬剤の誤使用によるミスは数多い。理由は「ほかの患者のものと取り違えた」などさまざまだ。こうしたミスを防ぐには、投与される薬剤名、分量、効果まで事前に説明を受けておく。点滴を受ける時はボトルに記載された氏名、薬剤名、日時、分量、滴下スピードも確認する。また、薬剤には副作用があるものも多いので、考えられる副作用や自分がふだん使用している薬があれば説明しておくこと。




ケース3 検査のための手術でくも膜下出血

静岡県のC病院で腫瘍検査のため鼻の奥から組織を採取する手術を受けていた男性患者が、術中に大量出血して、くも膜下出血を引き起こした。病院は、医師が組織をうまく採取できず、3度目の採取の際、腫瘍に接する動脈に手術器具が当たった疑いがあることを認めた。病院は家族に「通常なら約1時間で終了するが、出血や失明の可能性はある」と説明していたものの、「動脈がその位置にあり、危険性が高いことは手術前から知っていたが、家族には十分に説明しなかった」としている。

チェックポイント
検査のための手術は医師も慣れている場合が多く、油断しやすい。患者も「腫瘍を摘出する手術よりは簡単なもの」と思い込みがちだ。しかし、手術である以上、医療器具による侵襲を受けることには変わりなく、危険も当然ある。検査のための手術であっても、危険性や考えられる後遺症などを事前に聞いておくべきだ。さらに、自分の病気について勉強し、手術する部位に大きな血管や組織はないか、なども勉強しておくと、術前の説明でより詳しい内容を求めることができるだろう。








覚えておきたい対処法

過失を証明する証拠を集める

「医療事故かもしれない」と疑いを持った際に一番大切なのは、ます冷静になること。それから「何が起こつたのか」を把握していくことになるが、「過失を証明する状況証拠をいかに集めるかがポイント」と語る。具体的には

  1. 医師側の治療経過、治療方針などについて、医師や看護師から、いつ、どこで、具体的にどのような発言があったかを時系列に沿って具体的に書きとめる
  2. 患者がいつ、どのような容体だったか可能な限り思い出し、その体温や脈拍、発汗の状況、痛みの具合、尿や排便などについて具体的に書きとめる
  3. 治療方針を書いた書類などがあれば保存する
  4. 診断書や領収書、レセプト控などについても保存する
  5. 担当の医師や看護師の氏名、病室の同室者の氏名なども可能な限り控えておく
  6. 可能な範囲でボイスレコーダーやテープレコーダー、デジタルカメラなどで患者の様子、医師の説明など生の証拠を収集しておく
  7. 死亡事故の場合は警察に通報して司法解剖を求める手続きをする
  8. 医療専門の弁護士に相談し、証拠保全手続きをとって診療録、手術録、看護記録、X線検査のフィルム、レセプト控などを確保する。それらを検証してくれる協力医を見つけ、その意見も踏まえて今後の方針を決める

といったことが必要になる。

相談窓口などを利用しよう

医療事故に関する市民団体なども全国各地に存在する。医療事故を疑った際には、まずはこうした機関の相談窓口をたすねてみよう。
「医療訴松を起こす場合、覚えておいていただきたいのは、訴訟には膨大な時間と費用がかかるということ。もちろん、必すしも満足のいく結果が得られるわけではありません。やはり、医療ミスを未然に防ぐ努力を惜しまないでほしいと思います」




日本医療企画「ホスピタウン」より



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