今年中学3年生になる息子のことで相談があります。小学2年生から地元のリトルリーグで野球をはじめ、現在も中学の野球部でエースをしています。ところが、昨年9月頃から利き腕である右肘の痛みを訴え、近くの整形外科に行ったところ、「軟骨除去の手術をする必要がある」と言われ本人も悩んでいます。プロ野球の世界では手術という言葉を聞きますが、中学生でも手術をする必要があるのでしょうか?
(46歳/女性)
A)軟骨の剥離、遊離が診られる場合には手術が必要となります
患者さんのスポーツ歴や症状、医療機関の説明内容を考え合わせると、スポーツ活動(野球)により離断性骨軟骨炎(いわゆる投球肘)が生じたものと考えられます。
この病態は、成長期に繰り返される投球動作により、肘の外側の関節面に無理な圧力がかかり、軟骨の変性を来たす「使いすぎ症候群」の1つといえます。さらに病態がすすむと、変性した軟骨(骨片を含むこともある)が剥がれ、関節内に遊離し、関節の間に挟まり痛みや可動域(関節の動き)の制限を起こします。これがいわゆる関節鼠によるロッキングという状態です。
治療は、比較的初期に発見することができれば、投球を中止(多くは1年程度)し肘関節の安静を保ち、関節の負担を取り除くことにより症状は改善するとされています。しかし、軟骨の剥離、遊離が診られる時には手術療法が必要となります。手術の方法は、病変の大きさや程度により様々な方法が行われていますが、骨端線が閉じたあとの年齢(骨格が成熟した年齢)で、遊離体がロッキングを生じるものは摘出手術を行います。
もしロッキングを繰り返したり、伸展障害(肘が伸びない状態)のまま無理に投球動作を行っていると、いずれは変形性関節症に至ることも危惧されます。まずはスポーツ専門医を受診することをおすすめします。最近ではスポーツ外来を開設している医療機関も増えています。
投球肘で悩んでいる高校生の投手が来院しました。残念ながら、投手としては復帰することができませんでしたが、打者としては痛みもなく肘を使えるまで回復し、甲子園にも出場を果たしました。障害を乗り越え成功を収めた者も多くいます。良い結果を得られるように、的確な治療を受けてください。
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