アトピーとは、アレルギーを引き起こす物質であるアレルゲンの刺激に、皮膚が過敏に反応して起こった湿疹反応のこと。一般に、アトピーに罹患している人の皮膚は、表面にある角質の保水力の機能が低下しているため、アレルゲンを通しやすいと言われ、多くの場合、子どものころに発症する。
たとえば羊毛布団に寝ると、皮膚が赤くなったり、腫れぼったくなったり、かゆくなったり、さまざまなトラブルが生じる。この場合を「アレルギー」という。
私たちの体は、外部から異種たんぱく質の「抗原（アレルゲン）」が侵入すると、それを排除するためにたんぱく質の「抗体」をつくる。いわゆる「免疫」である。そして、再び「抗原」が侵入してくると、免疫反応が起こって、有害物質である「抗原」を排除しようとして不快なアレルギー反応を起こす。アレルギー反応は、これ以上抗原が侵入しないように注意を促していると言っても良い。

私たちをとり囲んでいる物質のなかで、アレルゲンになりうるものを限定するのは難しいとされるが、代表的なアレルゲンには次のようなものがある。
○住居に関するもの
ハウスダスト、家ダニ、ゴキブリ、カビ、ベットの毛やフケ、化学建材、塗料、その他
○食物に関するもの
牛乳、卵などの動物性たんぱく質、大豆、そば、小麦粉、トウモロコシ、ゴ
マ、食品添加物
○衣類に関するもの
羊毛など木綿以外の生地
○洗剤に関するもの
せっけん、シャンプー剤、リンス剤、入浴剤、浴室洗剤・台所洗剤・住居用洗
剤
○その他
花粉（スギ、ブタクサ、ヨモギ、アシなと）、真菌（カンジダ、ペニシリウムなど）など

アトピーの症状は、年齢によって変化していく。生後２〜３ヵ月ころから発症し、最初は頬や額などに赤いポツポツとした発疹が見られる。おむつの当たる部分や首、腕などでは、皮膚の一部が赤くカサカサすることもある。頭や眉毛などに黄色いかさぶたのようなものが付着しているケースもあるが、これも症状の１つ。この時期の湿疹は通常、ジュクジュクしている。かゆみが強く、ひっ掻くと滲出液と呼ばれる汁が出る。それが乾いてフケやかさぷたのようになる。この過程を繰り返しながら、手足や腹部へと症状が広がっていく。重症の場合は、皮膚は赤くなり、そのなかに湿疹とかさぶたが混在しているような状態となる。
２〜３歳ころになると、首や肘・膝の裏など、皮膚の柔らかい部分に湿疹ができる。かゆみが強いため、掻きむしって血がにじむこともある。その後、かさぶたになって徐々に改善するが、その部分の皮膚は、しだいに厚みを増していく。このころから始まる小児の皮疹の特徴には、耳たぶのつけ根が切れていたり（耳切れ）、皮膚の一部にブツブツと鳥肌が立っている症状なとがある。もう少し年を重ねると、皮膚が乾燥して粉を吹いたような状態となり、全体的に蒼白な感じを受けるようになる。
さらに12、13歳ころになると、皮膚の乾燥は進んで、さらに厚ぼったくザラザラした感じになると同時に、肘、膝の裏、首筋、頭、腹部など、体の至るところに固くなった湿疹が見られる。また、眉毛の外側3分の1ほどが薄くなったり、眼の下にシミや深いシワが散見されることも多い。

アトピーのピークは1歳と言われているが、最近は、思春期を過ぎても治らずに、慢性化するだけではなく、重症化する”大人のアトピー”が増えている。それも、以前は思春期の15、16歳に多く見受けられたものの、次第に高齢化して現在は24、25歳にピークが移行しつつある。
原因には、治療薬であるステロイド剤を怖がるあまり、十分使用されていないことや、ストレス、疲労、紫外線などの影響、シャンプー剤など、生活習慣や環境の変化による。”皮膚のバリア機能”の低下などが考えられる。
症状は、子どものころと少し異なる。顔全体が赤く腫れぼったくなり、断続的に強いかゆみを伴う。掻きこすると黄色っぽい滲出液が出る。額の両側や眼のまわりは、赤くただれて、眉毛の外側は薄くなる。こうした症例の場合では、眼の合併症である白内障や網膜剥離の発症リスクも高くなる。
また、頸（首）にも強いかゆみが見られ、不十分なステロイド剤の使用で網目状の色素沈着が見られるケースも多い。体全体の皮膚が乾燥し、ところどころに赤褐色のブツブツができ、じんましんのような赤い浮腫が出ることもある。
このように顔、首を中心とした症状に患者が悩ませられるのが特徴だ。