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問診からほぼ診断がつき血液検査などでチェック

アトピーかとうかは、皮疹の典型的な分布や推移など、これまでの症状やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、ぜんそくなどの既往症・合併症、あるいは家族歴などの問診から、ほぽ診断がつく。したがって、検査は参考程度の情報にすぎない。
検査には、血液検査や皮膚検査がある。このうち血液検査は、血液中の免疫グロブリンたんぱくの1つであるlgeや白血球の1つである好酸球を調べ、アレルギーの原因となる抗体の有無、アレルギー炎症の程度を診る。
一方の皮膚検査では、ひっ掻いた部位に抗原のエキスを注射針などでたらす(プリックテスト)、抗原を皮膚に貼って24〜48時間後にアレルギーの一種である紅色小丘疹のような反応が出るかとうかをチェックする(パッチテスト)、なとにより反応しやすいアレルゲンを調べる。
このほか、大人の場合では白内障や網膜剥離など眼の合併症の検査なとが、定期的に行われる。




外用薬やスキンケアが主な治療法

アトピーの治療では、体質の改善を図りつつ、湿疹などの皮膚のトラブルを治していく。この湿疹の治療に用いられるのが外用薬のステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)である。
ステロイド剤には、いろいろなタイプ(軟膏・クリーム・ローション・ゲル)や強さ(マイルドからストロングストまで)のものがあるため、症状や部位、年齢などに応じて選択される。たとえば、軽症の場合は、ステロイド剤を含まない外用薬(尿素軟膏・白色ワセリン・亜鉛化軟膏などの保湿性のもの)を使い、必要に応じてマイルド以下の弱めのステロイド剤を使用する。中等度の場合は、2歳未満であればマイルド以下のステロイド剤、2〜12歳まではストロング以下のステロイド剤、13歳以上はベリーストロング以下のステロイド剤を使用する。
一方、重症・最重症の場合は、2歳未満であればストロング以下のステロイド剤、2〜12歳および13歳以上はベリーストロング以下のステロイド剤を使用する。現在はこうしたステロイド剤の使用に関してガイドラインが設けられつつある。
このほか、必要に応じて抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤などの内服薬を使用して、かゆみに対処していく。




使用期間の調整でステロイド剤の副作用に対処

ステロイド剤については。「塗って症状が良くなっても、やめればすぐに悪化するのではないか」「ステロイドの使用で、かえって塗った部分が赤くなった」「毛細血管が拡張してきた」「塗った部分の皮膚が薄くなってきた」「塗った部分に毛が生えてきた」など、以前からさまざまな副作用の問題が指摘されている。これらの副作用については、患者や家族にも十分認識されているため、使用をためらう患者も少なくない。
しかし、最近では、逆にステロイド剤を使用するうえでの注意が行きわたるようになり、安全な使い方が浸透しつつある。「ステロイド剤を顔にはなるべく使用しない」「使用する場合は短期間にする」「1〜2週間様子を見て、症状に合わせて薬を変えていく」といった工夫が行われているが、大事なことは、ステロイド剤の使用におびえることなく、副作用を正しく知って、上手に使いこなすこと。自分で勝手に判断して、ステロイド剤の使用をやめたりしないことが重要だ。




ステロイド剤は十分量をやさしく塗りのばす

ステロイド剤の塗り方をマスターするのも大切なことである。ステロイド剤の量としては、「Finger tip unit(FTU)」の考え方が普及している。「成人の人差し指の第1関節の長さにチューブから塗り薬を出した量が約0.5g。これを塗リのばす範囲は、成人の手のひら2枚分か最適」とされている。
不十分な外用は症状の潜延を促すと言われているので、FTUの遵守を肝に銘じておくこと。塗り方もゴシゴシとこすリ込むのではなく、やさしく塗リのばすようにする。
また、各部位の症状の重症度に合わせて、その症状に適切なランクのステロイド剤をしっかりと塗ることも重要である。




「タクロリムス」軟膏の併用も

新しい免疫調整外用薬として、ステロイド剤を補うタクロリムス剤が注目されている。1999年に登場した薬で、ホルモン作用を持たないため、ステロイド剤のような副作用がない。特に薬の吸収力が高い顔面に使用すると十分な効果が得られ、「アトピーで赤くなった肌が、タクロリムスの使用で激減した」とも言われている。ただし、塗ると皮膚がヒリヒリして、なかには2〜3日続く人もいる。また、免疫抑制作用を持つので、皮膚感染症の発症には注意しなければならない。
この薬の登場により、ステロイド剤の副作用が軽減できる、というメリットは大きい。ステロイド剤の使用では改善できない場合や、特にステロイド剤の使用に限界のある顔面頚部の皮疹に対しては、現在、第一選択薬として用いられている。




「気にならない程度に治す」という気持ちが大切

アトピーを治療する時には、「完全にきれいな皮膚を取り戻す」と意気込むのではなく、「どの程度まで皮膚が改善できれば自分は満足できるか」を考えて治療することが重要だ。完治をめざそうとすると、生まれ持った皮膚の質という側面もあるため、横車を押すようなことになりかねない。
むしろ「少々赤味が残っても、気にならない程度なら良い」「このかゆみをとって、多少の症状は残っても、気持ち良く暮らせるような季節があればそれで良い」など、達成できそうな目標を順次決めて実行に移すことだ。この心の余裕が治療の効果を大きくする。





日本医療企画「ホスピタウン」より



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