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衣服の脱ぎ着もできなくなる五十肩

昨日までは何ともなかったのに、急に痛み出して夜も眠れない、衣服の脱ぎ着もできない…そんな状態になったとき、痛みに耐えつつ「ついに五十肩になったか」としみじみと年を感じてしまうはず。でも、その名の通り、老化に関わっていると推測されますが、原因がよくわかっていない不思議な病気なのです。

肩から腕にかけての痛みと運動制限が特徴

人材派遣会社を経営する中谷さん(54歳)は、休日に伸びきった庭木の剪定をしていました。終わったあとに腕にけだるい痛みを感じましたが、使い慣れない筋肉を使ったせいだろう、と思っていました。ところがその痛みは翌日から少しずつ増していきます。そして3日後にはもう夜も眠れないほど痛み出しました。痛いばかりか腕が90度以上上がりません。あまりの痛みに近くの整形外科を受診。痛み止めのステロイド注射を打ってもらい、ハップ剤を貼り、消炎鎮痛剤を飲まなければ仕事どころではなかったといいます。
主婦の鈴木さん(57歳)は、トイレで便座に座ったまま水を流そうと手を後ろに回したとたん、右肩にズキッという痛みを覚えました。痛みは次第にひどくなり、常備薬の湿布薬を貼りましたが、いっこうに治まらず、うずくように痛み出し、夜も眠れません。翌朝には右腕を抱えるように保持しないと、痛くてたまらず、食事の支度もできずにそっとソファにもたれかかっているしかなかったといいます。
ひと口に五十肩といっても、重い人から軽い人まで症状はさまざま。痛み方にも個人差があります。肩が痛むために、ひどい肩こりだと思っている人もいるようですが、肩こりとの違いは、「肩から腕にかけて痛むこと」と「腕の動きが制限される」ことです。突然痛み出すこともありますが、どちらかといえば、徐々に痛みが強くなっていくほうが多いようです。最初のうちは動かしたときにだけ痛みますが、次第に動かさなくても痛むようになります。そして腕を体側から60度上げたあたりから痛み出し、重症ではそこまでしか動かなくなり、軽症でも90度くらいしか動かなくなります。

構造的に炎症が起こりやすい部位

なぜ五十肩が起こるのかについては、まだまだ十分に研究が進んでいません。50歳代前後の人に好発するため、老化に関わると推測されていますが、まだ原囚は特定できず、謎の多い病気になっています。世界各国共通に起こり、男女の性差はありません。経過も人それぞれ。1年以上かかるケースも少なくありません。
五十肩とは、肩甲骨と上腕骨を連結している平べったい板のような形をしている棘上筋の尖端の腱板に炎症が起こる病気です。なぜ炎症が起こるのかは、腱板が老化しやすい組織であり、また構造的に腕を上げ下げするたびに「肩峰」という肩甲骨の一部にぶつかることによるものと考えられています。

まずは痛みをとることが治療のメイン

五十肩と鑑別するための診断は、まず触診によって行われ、肩関節の動きを調べる運動機能検査が行われます。そのあとX線写真をとります。X線写真では五十肩による異常は写りませんので、その目的は五十肩以外の病気かどうかの消去法によるものです。MRIや超音波が使われることもありますが、これもすべて補助的な診断に必要な検査です。
五十肩と診断がつくと、治療はとにかく激しい痛みをとることを目的に行われます。消炎鎖痛剤にはいろいろな種類があり、痛みの強さや全身状態によって投与される薬には違いがあります。痛みを和らげ、炎症を抑える非ステロイド性消炎鎖痛剤やステロイド薬が使われることもあります。
痛みの種類によって、内服薬、生薬、外用薬があり、激しい痛みには生薬が使われます。座薬は基本的には朝と寝る前の1日2回。内服薬は胃腸障害を起こすことが多いので、1日3回食後に飲むものが主流ですが、最近は1日1回で長時間作用するものもあります。胃の粘膜を保護するための薬を同時に飲むことにより副作用を和らげます。外用薬は1日2回患部に貼ります。
夜も眠れないばどの強い痛みがある場合には、局所麻酔薬とステロイド薬の混合注射を週1回、1〜5回打ちます。



五十肩の経過と過ごし方

●急性期
非常に痛みが強い時期で、痛み始めて短い人でも約1週間、長い人では約2週間かかります。肩や手を動かさないようにし、痛むような動作はやめます。とはいえ、急性期でも固定したままだと癒着が起こるので、独特の「振り子運動」という体操を行います。そのほかのときには日中は三角巾で腕を吊っておき、あまりに痛みが強いときは寝るときにバストバンドで腕を体に巻き付けて固定し、動かないようにすることもあります。

●慢性期
痛みも一段落し、鈍い痛みに変わったら、「振り子運動」を積極的に行います。この時期には患部を温めることが大事で、入浴やカイロで温めます。

●回復期
発症してから3〜6ヵ月で不快感がなくなり、痛みが消えてきます。この時期には十分に肩を動かさないと、運動制限が長く残ります。積極的に運動を行いましょう。







日本医療企画「ホスピタウン」より



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