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最近では冬季にも食中毒の発生件数が増えていますが、やはり多発するのは夏。
梅雨の季節が目前になると、毎年嫌でも食品衛生に敏感にならぎるを得ません。まずは、この難敵の正体を探ることから始めましょう。


ときどき集団食中毒事件が起きてニュースが流れても、生活環境が向上し、衛生面も改善されている現在、食中毒なんて滅多なことでもないかぎりかからないと思っている人がほとんどでしょう。
しかし、この半世紀の間食中毒患者の数に変化は見られないのが現実。エアコンや床暖房などの普及や輸入食品の増加などで、かえって発生しやすい環境になっているといえるほどです。
また、発生場所についても、飲食店や弁当屋など外食産業がほとんどだと思っている人が多いようですが、実は家庭での発生件数もそれらに迫っているのです。
これは、食中毒の原因の大半が細菌で、私たちが口にする食品に簡単に侵入してしまううえ、短時間にものすごい数に増殖するからです。食中毒は他人事ではないということを自覚し、身近な問題として考えたいものです。





食中毒は「食品や容器などから原因物質を摂取してしまうことで起きる機能障害」と定義づけされています。そして、その原因によって、細菌性やウイルス性のほか、フグやキノコなどの自然毒によるもの、農薬などの化学物質によるものに分けられます。
このなかで圧倒的に発症例が多い細菌性食中毒について見ていきましょう。細菌性食中毒には、サルモネラ属菌や腸管侵入性大腸菌などが原因の感染侵入型、腸炎ビブリオ菌や、O-157に代表される腸管出血性大腸菌などによる感染毒素型、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌などに起因する生体外毒素型があります。
食中毒の原因となる細菌は海や川や土の中だけでなく、人間や動物の体など至る所に存在し、そのすべてが感染源になる危険性をもっています。そして、食品などの感染経路を経て人体に侵入するわけです。


●細菌性食中毒の主な種類と特徴

特徴 細菌の種類 細菌の性質 主な原因食品 潜伏期間 主な症状





口にした食品にいた細菌が腸管上皮に入り込み細胞を攻撃することで症状が引き起こされる サルモネラ属菌 低温、乾燥に強い 鶏卵、牛・豚・鶏などの食肉 6〜72時間 腹痛、下痢、発熱、頭痛、吐き気
腸管侵入性大腸菌 微量でも感染し、人からの直接感染もある 食品、水 8〜24時間 発熱、しぶり腹、出血を伴う下痢
エルシニア菌 5度以下でも増殖する低温細菌 牛乳、乳製品、食肉、井戸水 2〜4日 激しい腹痛、下痢、発疹




口にした食品内の細菌が腸管の中で毒素を出し、この毒素が腸管上皮細胞を攻撃することで症状が引き起こされる 腸炎ビブリオ菌 塩水を好み、真水に弱い。短時間で増殖するが熱に弱い 魚介類 7〜24時間 さしこむような腹痛、激しい下痢、発熱
ウエルシュ菌 芽胞は沸騰しても死滅しない 食肉、魚介類、カレー、シチュー 6〜18時間 下痢、腹痛
腸管出血性大腸菌
(O-157)
強力な毒素を作り出し、短期間で生命を奪うことも 食品、水 2〜10日 出血を伴う下痢、激しい腹痛、むくみ。
重症の場合は尿毒症、意識障害など





食品に付いた細菌が作り出した毒素が体に入り、腸に吸収されて症状が引き起こされる 黄色ブドウ球菌 食品の中で作られる毒素は熱、乾燥に強い おにぎり、サンドイッチ、ケーキ 1〜6時間 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
ボツリヌス菌 芽胞は熱、消毒薬に抵抗力をもつ。強力な毒素を作り、致死率が高い いずし(魚の発酵食品)、ハム、ソーセージ、缶詰、瓶詰 8〜36時間 吐き気、嘔吐、便秘、倦怠感、めまい。症状が進むと言語障害。




食中毒は、原因物質が体内に入ったあと、どのようにして起こるのでしょうか。口から摂取した食物は胃や腸で消化吸収され、残ったカスは便になります。
この過程で、うまく防御機能が働けば発症はしません。つまり、唾液の中のリゾチームという酵素や胃液の中の胃酸によって細菌または毒素が力を失うか、腸に達しても便と一緒に体外に排出されれば発症せずに済むのです。
ところが、腸に到達した細菌が増殖して毒素を出したり、細胞に侵入して腸管の機能を阻害すると、食中毒を発症してしまいます。発症すると、吐き気や嘔吐、腹痛や下痢などの症状を呈します。そして症状が進むと出血を伴う下痢やけいれんなどを起こすこともあります。また、タイプによっては生命に関わるケースもあるので、食品管理には十分な注意が必要です。





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