●症状
肌に合わない衣類や寝具を身につけた時だけでなく、お風呂に入ったり、布団にもぐりこんだりして体が温められると急にかゆみが生じることが多い。また、冬の乾燥や夏の汗は、防御機構が低下している肌を刺激するので、かゆみが強くなる。このように季節によってかゆみの程度が異なるのもアトビー性皮膚炎の特徴。乳幼児がかゆみに我慢できず、皮膚をかき壊して傷だらけになることも少なくない。受験期の高校生や就職活動中の大学生、両親の離婚といった家庭問題などでストレスのある小学生などの場合、重症になることが多い。
発疹の症状は年代によって異なる。乳児期は、目や口の周辺や頬、額などに赤いポツポツや水疱ができ、首やひじ、ひざ、手首などの汗や汚れがたまりやすい部分が赤くジユクジユクする。さらに小児期になると、顔よりも関節部分や体部の発疹がひどくなる。体幹はジユクジユクの湿疹様ではなく、皮膚が粉を吹いたように乾燥してくるのが特徴。関節の裏側の皮膚は赤く厚くゴワゴワとなり(苔癬化)、耳の後ろなどには耳切れができる。思春期以降の発疹は、顔や胸、背中、ひじのくぼみなど上半身に多く見られ、特に、額、頬から首にかけて赤くなったり、色素沈着をきたす(ダーティースキン)。
●原因
乳児期は卵や牛乳などの食物が原因になることが多く、また発汗や皮膚の汚れも皮膚を刺激して発疹を悪化させやすい。幼児期では、ハウスダスト、ダニ、カピなどの生活環境が、思春期になると、過労や心身のストレスなどが原因として生じる。人間関係の強いストレスが加わると、途端に悪化する人も少なくない。
●治療
アトピー性皮膚炎の人は皮膚の表面(角層)の油(セラミド)が少なく乾燥する。この乾燥を改善することが皮膚のかゆみを抑え、湿疹の発生を予防するため、尿素軟膏やセラミド入りロ−ション、ワセリンやヘパリン類似物質入りクリームなどの保湿剤の使用が大切である。また、炎症を抑え、かゆみを鎮める薬物治療も必要になる。
皮膚の炎症を抑える塗り薬としてステロイド剤とタクロリムス軟膏がある。ステロイド剤に関しては、皮膚が薄くなり毛細血管が赤く浮き出るなど特有の副作用を恐れて、塗る量を減らしたり、ちょっと症状が改善するとやめたりする人がいるが、炎症がぶり返しやすくなるので注意が必要。医師の指示のもと、適量を健康な皮膚と同じ柔らかさになるまで塗ることが大切だ。一方、タクロリムス軟膏は顔の発疹や赤ら顔の症状に用いられる。ホルモン剤ではないので副作用は少ないが、1日量が10g以下と制限されている。注意書をよく守って使用することが不可欠だ。そのほか、かゆみが強い時には、かゆみを引き起こす活性物質のヒスタミンを抑える抗ヒスタミン剤、抗アレルギー薬が用いられる。
●日常の注意
皮膚炎を完全に治すというよりは、日常生活に差し障りがない程度にすることが治療の目的となる。その治療法を補助するためにも、日常では、室内をまめに拭き掃除して換気を良くし、ダニやほこりを減らすことを心がけよう。皮膚に接触する衣類や寝具なども化学繊維や羊毛は避け、木綿のこざっぱりした物を使用する。合併症として細菌感染やウイルス感染を起こしやすいので、毎日入浴して汗や汚れを落として皮膚の清潔を保つ。また、皮膚の乾燥を防ぐために保湿剤を使用する。この保湿剤は、皮膚に適した使用感のよいものを選ぶと良い。
|