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ちょっとつらい・・・という時は心理療法を試してみよう

■心理療法で自律神経を安定
自律神経の乱れの大きな原因となる心身のストレス。特に、自分の理想の姿をゴールにおいて、「人生はこうあるべき」「人はこう行動すべき」と、かたくなに「すべき」を求めると、現実との葛藤からストレスが強くなり、自律神経も乱れる。まずは、こうしたものの見方や生活態度を変えることが、自律神経の安定には大切だ。
その方法として、心療内科などでよく用いられるのが心理療法。医師が会話を通して患者の悩みを「つらかったね」と受け止め、支持し、「大丈夫、良くなる」と保証して心を癒す「簡易精神療法」や、認知(ものの見方や考え方)を変えて歪みを取り除く「認知行動療法」、日記などをつけながら、ありのままの自分を受け入れ、症状にとらわれない生活をめざす「森田療法」、相手とのかかわりを分析しながら人間関係を改善する「交流分析」、自己暗示によってストレスを解消しリラックスできる「自律訓練法」などがある。
このうち、認知行動療法と自律訓練法は、自律神経の乱れを自覚した時のセルフケアとして、自宅でも行うことができる。

■マイナスな考え方を変えるABC思考法
認知行動療法の1つに「ABC思考法」がある(AはAFFAIRS・出来事、BはBELLIEF・思い込み、CはCONSEQUENCE・結果、あるいは結果として起こる感情や行動)。
たとえば、会議中に電話が鳴る(A)と、うるさいと思う(C)のは、常識的な感情だが、「会議中は静かにすべき(B)」と思い込んでいると、不快感はかなり強くなる(C)。しかし、「この電話は仕事成立の知らせかも」と期待していると(B)、電話の音は快適に聞こえる(C)。
このように、Bの思い込みでCの行動は左右されるわけだが、一方で、Bの思い込みを変えれば、Cの結果も不快から爽快に変えることができる。自分が抱きがちな、「マイナスなものの見方や考え方、受け止め方」を見つけて変えていけば、現実にうまく適応した行動をとることができるはず。快い気分を得られて、自律神経の乱れも改善するというわけだ。
たとえば、「上司に叱られた。ひどく落ち込んで、気分が悪い」という状況の時、どうして落ち込むのかを考えてみる。「自分は完璧な人間なのに、上司は自分を認めていない」など、理由はそれぞれだろうが、それはあくまでも自分のものの見方であり、思い込みに過ぎない。そこで、自分のとらえ方を、「人間には良い面も不完全な面も多くある。自分がもっと良くなるように上司が指導してくれている」と変えると、上司に叱られても不快を抱かず、プラス方向に持っていくことができる。ストレスを避けたことによって自律神経は乱れず、心身の不快症状も現れない。
落ち込むことがあった時は、このABC思考法をあてはめて、ものの見方をちょっと変えてみよう。みるみる元気がわいてくるはずだ。

■心の安定を図る自律訓練法
ストレスなどによって興奮すると交感神経は活発になり、ますます興奮して、力も入ってくる。これを静めるのが副交感神経だ。この副交感神経の働きを高め、自律神経のリズムを整えて、心身をリラックスさせ、心の安定を図るのが「自律訓練法」である。
これは一種の自己暗示で、暗示をかけることによって心と体の緊張を解きほぐし、日常の行動をゆったりした状態に変えていく。ドイツの精神科医シェルツによって提唱されたもので、準備段階の背景公式、自律訓練の6段階公式、そして自己暗示を解く消去動作からなる。このうち、背景公式と、2段階の公式、消去動作を身につけ、普段の生活に取り入れて、食後、入浴後、就寝前などに行うと良いだろう。




■自律神経が乱れる病気
体や心に不調があるものの、これといって臓器や器官の異常が見られない場合や不調の原因が見つからない場合、「自律神経失調症」と診断されることが多い。これは、器官や内臓が活動する時に活発に働く交感神経と、リラックスする時に働く副交感神経のバランスが崩れる機能障害だが、この病名は日本独自のもので、病名としても正式に認められているわけではない。
また、自律神経は内臓や器官の働きをコントロールする神経
なので、たとえば胃腸や心臓が悪かったり、高血圧や貧血、糖尿病であっても乱れが生じる。自律神経と関連する神経性嘔吐症、心臓神経症、過呼吸症候群、過敏性腸症候群などの病気もある。
症状の1つであるイライラや焦燥感などから、「自律神経失調症だろう」と診断されたケースのなかには、うつ病などの心の疾患が隠れていることもある。
気になる症状がある時は、自己診断せず、心療内科を受診し、不調の背景に病気が隠されていないかをチェックしよう。




日本医療企画「ホスピタウン」より



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