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鼻は一見すると顔のほんの一部のように思われるが、実際には頭部の3分の1を占めており、鼻腔と、さまざまな大きさや形をした空洞である副鼻腔から成っている。鼻は、匂いを感知し鼻腔で声を共鳴させることだけでなく、吸い込んだ空気のほこりや細菌を取り除いて肺に送る働きをしている。
この時、きれいになった空気は、鼻腺から出る約1リットルもの粘液によって湿気を与えられ、粘液を流れる血管によって適度に温められ、ほど良い温かさと湿気を伴って肺に送られる。この1リットルもの粘液が、いわゆる鼻水であるが、普段はこの粘液による湿りは自覚されない。
鼻水として感じられるのは、鼻に炎症が起きている時である。一般に、アレルギー性鼻炎や、鼻時かぜと言われる急性鼻炎の場合は水っぽい鼻水に、慢性副鼻腔炎の場合は粘液状で黄色や黄緑の膿性の鼻水になる。これは粘膜に細菌感染が起こったために生じた白血球や細菌の残骸である。



アレルギー性鼻炎

●症状
立て続けにくしゃみの発作が現れ、鼻水・鼻づまりの症状に見舞われる。頭が重い、ぼんやりする、うっとうしいなどの感じがつきまとい、目のかゆみや充血、涙目、のどの痛みなどの症状も伴う。1年を通じて現れる通年性のものと、季節によって現れる季節性のものとに分けられる。季節性のものでは花粉症が代表的。

●原因
通年性の場合は、家の中のほこり・ちり(ハウスダスト)、ダニ、カピ、猫や犬・小鳥などペットのふけなどがアレルゲンになる。そのほか、天候や気温の変化なども影響を与える。季節性のものでは、スギ、ブタクサなどの花粉が第一にあげられる。スギ花粉症は日本と中国で目立つが、国によって花粉症の原因となる植物は異なる。ただし、アレルギーの原因となるアレルゲンがあるからといって、誰もが発症するわけではない。外部からの異物が体内に入り込まないための防御システムである免疫を抑制する遺伝子の力が生まれつき弱く、アレルギーを起こしやすい体質の人がアレルゲンに過剰に反応すると、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー性鼻炎が生じる。

●検査・診断
くしゃみ・鼻水・鼻づまりの典型的な症状があっても、アレルゲンに関する検査をしてみなければ、アレルギー性鼻炎かどうかは断言できない。検査方法には、@鼻汁の中に白血球の1つである好酸球の増加をチェックする鼻汁検査(アレルギー反応が起きていると増加する)、A抗原抗体反応を引き起こす抗体がどれくらい含まれているかをチェックする特異的lgE抗体検査、B考えられるアレルゲンを皮膚に注射して(引っかき傷をつくり、たらす)、15分後に皮膚が赤くはれているかどうかをチェックす皮膚テスト、CBで出た可能性の高いアレルゲンをしみこませた小さな紙を鼻の粘膜に貼り付けて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの反応増強をチェックする鼻粘膜誘発テストがある。これらの検査で、反応がみられない場合は、アレルギー性鼻炎ではなく血管運動性鼻炎と診断される。症状は似ているが、その原因は自律神経の調整がスムーズに働かないこと。急激な気温の変化、ストレス、アルコールの摂取などをきっかけに発症する。

●治療
症状を軽減するためには、@抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬を内服する、A点鼻薬として副腎皮質ホルモンのスプレーを使用する、B目のかゆみなどを伴うなら、抗アレルギー剤の点眼薬を使う−などの薬物療法を季節前から行う。花粉症の場合は、花粉情報(気温の上昇と湿度の低下が同時に起こると飛散する花粉量は多い)を見ながら、花粉が飛び始める2週間くらい前から抗アレルギー薬を使用すると、症状を軽くできる。そのほか、アレルゲンが特定できた時は、微量ずつ長期間アレルゲンを注射して、体内に遮断抗体をつくり、アレルギー反応を抑える滅感作療法という治療法もある。日常生活では、アレルゲンの除去や回避の工夫が必要となる。


アレルゲンを除去または回避する工夫

1.室内のほこりや侵入した花粉を掃除機で取り除く時は、排気処理の可能な掃除機を使用し、ほこりを室内にまき散らさない
2.ほこりははたきをかけず、固く絞った雑巾でふき取る
3.ダニの繁殖しやすいカ−ペットや畳はやめ、フローリンクやリノリウムの床にする
4.同様にソファーなども布製ではなく皮や合成皮革にする。インテリア小物は布製を避け、木製やプラスチックにする。カーテンもほこりがたまらないもの、湿気を吸いにくく洗いやすいものにする
5.上げ下げにほこりが立ちやすい布団より、掃除しやすいベッドにする
6.観葉植物など鉢植えはカピが発生しやすいので屋外に
7.ぬいぐるみなどはなるべく避け、木製やプラスチック、金属製のおもちゃにする
8.エアコンは週に1度、こまめに掃除する
9.空気清浄機を使用する
10.ダニ繁殖の原因となる結露に注意する。水まわり、家具の陰など局所的に冷たくなりやすい部分の温度・湿度をコントロールする。衣類はウ−ルや毛皮、化学繊維は避け、こざっぱりした木綿を着用する
11.食品の成分に注意する。アレルゲンを取り込まない。外食、市販品、インスタント、チルド食品などは避け、手作りにする

花粉症シーズンの対策

1.ストレスを強く感じる時、寝不足、体調不良時は症状が強いので、暴飲暴食、徹夜などは避け、快食快便快眠、規則正しい生活態度を心がける
2.室内では空気清浄機を使い、窓を開け放たない。換気する時は夜、花粉の飛ばない時間帯に窓を細めに開ける
3.洗濯物や布団は乾燥機を使用する。洗濯物を外に干した時は、よく払ってから室内に取り込む
4.外出する時は、顔を覆うゴーグルのような眼鏡、マスクなどを鼻につけ、帽子やスカーフで頭を覆う。衣類は花粉を払いやすいツルツルしたものを選ぶ
5.外出から帰ったら、玄関の外でブラシで花粉を払い、コートを脱いでから入る。洗顔、手洗い、うがい、鼻かみを忘れずに行う





副鼻腔炎

鼻腔の周りには4つの副鼻腔があるが、かぜをひいて急性鼻炎を起こした時、鼻腔粘膜に起こつた炎症が副鼻腔に及んで発症するのが急性副鼻腔炎。この急性副鼻腔炎が治らないまま慢性化し、膿がたまる病気が慢性副鼻腔炎−蓄膿症である。

●急性副鼻腔炎
かぜ以外にも、虫歯や鼻のケガなどが原因で急性の副鼻腔炎が起こることもある。鼻水・鼻づまりのほか、炎症のある副鼻腔部分の頬や鼻の付け根、前頭部などが痛むのが特徴。炎症がひどいとずきずきと痛み、発熱することもある。症状が進むと水っぽかった鼻水も膿を含んだ粘っこいものになる。頭痛・頭重などのすっきりしない症状も生じるようになる。鼻鏡検査で鼻腔の粘膜が赤くなっていればこの病気が疑われる。治療には抗菌薬、消炎酸素剤が使用される。鼻腔内の腫れは、血管収縮薬を用いると、分泌物が排泄され、鼻づまりも解消してくるが、多用は厳禁。症状が重い場合は、副鼻腔洗浄を行う。

●慢性副鼻腔炎
かつては多く見られた病気だが、食生活が豊かになり、抗生物質が用いられるようになつた近年では、急激に減少している。とはいえ急性副鼻腔炎が治りきらないままに放置すると慢性化し、副鼻腔に膿がたまり、鼻づまりがひどくなるので注意が必要。鼻水が鼻から排泄されずのどへと回り、気管支炎を起こすこともある。蓄膿症患者と言えば、常に口をポカンと開けているイメージがあるが、これは鼻で呼吸できず口呼吸をしているため。頭が常に重く、不快で、匂いを感じられない人も多い。
治療は急性副鼻腔炎とほぼ同じ。鼻腔内に血管収縮薬をスプレーして分泌物を排泄させた後、抗生物質や副腎皮質ホルモンなどを含んだ蒸気をあて、炎症や腫れを押さえるネブライザー治療を行う。重症の蓄膿症の場合は、内視鏡下鼻内副鼻腔手術が行われる。なお、慢性副鼻腔炎には鼻中隔彎曲症や鼻ポリープが合併して発症することがあるため、鼻閉と炎症が長期化する人もいる。




鼻中隔彎曲症

●症状・原因
かぜをひいているわけではなく、アレルギーでもないのに、鼻が詰まっている場合は、鼻中隔が曲がっていないかのチェックが必要。鼻中隔は”鼻筋が通っている”と言うときの鼻筋にあたるもの。骨と軟骨からできていて、鼻腔を左右に分けている。この鼻中隔が曲がっていると、やたらに鼻が詰まったり、鼻づまりに起因する頭痛に悩まされる。この状態を鼻中隔彎曲症という。

●治療
症状がひどく、日常生活に支障を来しているときは、鼻中隔の軟骨を取り出して、でこぼこを平らにする鼻中隔矯正術を行う。なお、人の鼻中隔は重い前頭葉を鼻柱が支えているので、誰でも多少は曲がっているもの。単に曲がっているだけでは病気とは言えず、手術の対象にはならない。





日本医療企画「ホスピタウン」より



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