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糖尿病と患っている人が、頭痛薬を飲んだところ意識がもうろうとした。原因は、糖尿病治療のために常用している薬と痛み止めの飲み合わせだった。
こうした薬の飲み合わせによる被害は、誰にでも起こりうる。
2種類以上、薬を服用すると、その作用や副作用が増強したり減弱したりする組み合わせがいくつか存在するが、なかには、非常に危険な組み合わせもある。
ここでは、病院から処方される主な疾患の薬について、体に悪い作用を引き起こす市販薬との組み合わせを紹介する。飲み合わせによるリスクを理解したうえで、「薬を飲むこと」をもう一度見直してみよう。



医療用医薬品と市販薬の違い

病院で処方される医療用医薬品は「単味製剤」といって、1つの商品に治療を目的とする成分は1種類しか含まれていないものが多い。そして、どの製剤をどの疾患に使用するかも決められている。
しかし、市販薬は1つの商品に多様な成分が含まれている。鼻炎薬と乗りもの酔い予防薬、風邪薬やアレルギーを抑える薬と睡眠改善剤などまったく異なる症状の治療に使用する薬に同じ成分が含まれていることも珍しくない。そのため、市販薬同士でも複数の薬を一緒に飲むと作用が重複し、体に悪影響を及ぽすことがある。


薬の剤形にも意味がある

錠剤を「飲みにくいから」とむやみに砕いて粉末にするのは避けよう。錠剤のなかには胃の中では溶けない膜で覆われ、効果を発揮させたい腸で溶ける腸溶剤など、さまざまな工夫が施されている薬があるからだ。砕きたいときは必ず薬剤師に相談するようにしたい。
散剤やカプセル剤など、ほかの剤形の薬も、体内での作用が計算され、設計されている。薬はできる限り本来の形のままで飲むことが大切だ。


腸で吸収される薬の効果

経口で薬を飲んだ場合、食道から胃に至る間に溶けながら、十二指腸から小腸で体内に吸収される。しかし、腸で吸収される際、飲み合わせによっては吸収が阻害され効果が薄れてしまう場合がある。
たとえば、さまざまな感染症や二キピ治療などに使用されるテトラサイクリン系の抗生物質は、カルシウムと結合すると、溶けにくく吸収されにくい物質に変わる。そのため、牛乳で飲むと、牛乳のカルシウムと結合してしまい、薬効を示す成分が腸で吸収されず、糞便中に排泄されてしまう。また、逆に薬が必要以上に吸収されすぎて中毒症状を引き起こす飲み合わせもある。


薬の血中濃度と薬効は比例する

一般的に薬の効き目は血液中に溶けた薬の量(血中濃度)に比例するため、薬の血中濃度がピークに達した時、もっとも治療効果を表し、血中濃度の低下とともに治療効果も薄れていく。これはお酒を飲んだ時に酔いが体にまわる原理と同様だ。血液中のアルコール濃度が高ければ、酔うし、低ければ酔わない。この血中濃度には、飲んだ量だけでなく、肝臓での代謝作用(体内に入った異物を処理する働き)が大きく影響している。薬も一種の異物として代謝されるのだが、薬の飲み合わせによっては正常に代謝しない場合がある。そうしたケースでは、必要以上に薬の血中濃度が高まることで中毒症状を引き起こしたり、逆に代謝されすぎて薬の血中濃度が薄まり、十分な効果が得られないこともある。
こうした吸収段階や血中濃度に作用する飲み合わせのリスクを防ぐためにも、市販薬に表記されている留意点によく注意したうえで、医師・薬剤師の指示を守り、飲み合わせの悪い薬や食品と一緒に服用しないように心がけよう。



日本医療企画「ホスピタウン」より



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