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受動喫煙の防止を義務づける健康増進法が施行されて丸3年が経過し、官公庁、駅、病院、デパート、飲食店など、多くの人が利用する施設での、禁煙や分煙も徐々に定着してきた。さらに最近では、列車内や路上など喫煙できない場所は次々と拡大。飲食店でも禁煙タイムを設定したり、灰皿そのものを置かない店が多くなっている。タバコ税の増税に伴い、タバコも値上げ。各種意識の調査などからも、禁煙を思い立つ人が増加している傾向がうかがえるが、一方では、「タバコが体によくないのはわかっている」「タバコはやめたい、でもやめられない」「禁煙はできないけれど、健康が気になる」と悩む喫煙者も増えているようだ。
これまで個人の意志や努力の問題とされてきた禁煙に対する医師の指導が、公的医療保険の給付対象とされるなど、禁煙に取り組む環境は、徐々に整備されつつある。ここでは「ニコチン依存症指導管理料」の解説を中心に、禁煙を達成するとっておきの方法を紹介しよう。



保険が適用される「禁煙指導」とは?

●COPD患者の増加が創設の背景に
「ニコチン依存症指導管理料」
もともと自費診療だった禁煙指導を国が医療保険としてまで推進する背景には、「慢性気管支炎」「肺気腫」などの総称である、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の増加がある。患者の約90%が喫煙者であることから、別名、”肺の生活習慣病””タバコ病”とも言われ、長期間の喫煙によって気管支や肺胞に障害を起こして発病する。WHO(世界保健機関)の統計によれば、現在COPDは世界の死亡原因の第4位にランクされており、今後数十年間で、その患者数と死亡率はますます上昇すると予測されている。この傾向は日本も例外ではなく、COPDによる死亡者数は年々増加。現在の患者数は540万人と言われている。
喫煙は、COPDに加え、肺がんなどの各種がんや脳卒中といった多様な病気を引き起こし、本人だけでなく、周囲にも健康被害を拡大する。禁煙指導が保険適用された理由には、症状が慢性化しがちで治療費もかかるCOPDはもとより、こうした病気の発病を”水ぎわで止める”ことで、結果的に高騰する国民医療費を抑制するねらいもある。

●全5回、2ヶ月余りに及ぶ指導
「ニコチン依存症指導管理料」にもとづく禁煙指導は、外来患者を対象に、初回(1週目)、2週目、4週目、8週目、12週目の計5回にわたって診療が行われる。
初回時には、まず、吸い始めた時期、1日に吸う本数など、喫煙に関する問診が実施される。その後、呼気の一酸化炭素濃度を、計測機器により検査。最低でも15秒間、口から息を吐き続け、有毒ガスの一酸化炭素が、どれだけ含まれているかが測定される。その際、基準値を超えていれば、吐く息が他人にも悪影響を及ぼす公害(口害?)だ。また一酸化炭素は、血中の酸素の運搬を邪魔し、体の働きを悪くするため、同時に血中の一酸化酸素濃度も測定する。
その後、禁煙の開始日を「禁煙宣言書」に記入して、文字通り禁煙を宣言。最後に、肌に貼ることで体内にニコチンが染み込むニコチンパッチが処方される。ここまでが初回の診療内容だ。
以後の回でも同様の検査を繰り返し、結果によって大・中・小とサイズが異なる二コチンパッチを使い分けながら禁煙に向かった指導が行われる。ちなみに、男女で指導方法が変わることはない。
わざわざタバコのパッケージにうたわなくても、喫煙が体に害を及ぼすことは、喫煙者の誰もが知っている。やめよう・・・と迷っている人は、迷わず、禁煙指導を行っている病院を受診してみてはいかがだろうか。




日本医療企画「ホスピタウン」より



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