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Q)造影剤で発熱、発疹が起こるのですか?

先日、激しい腹痛に襲われ近所の病院を受診したところ「急性虫垂炎の疑いがある」と言われ、CT検査を受けました。結局虫垂炎ではなかったのですが、検査の際に造影剤を注入された影響からか、3日後から体中に発疹が現れ高熱も続きました。後日聞いた話では、造影剤の影響で死亡する例もあるそうですが、検査の前に口頭で簡単にアレルギーの有無を聞かれただけで、安易に造影剤を注入する必要があったのでしょうか?また、現在の体の不調は改善されるのでしょうか?
(23歳/女性)

A)造影剤がアレルギーを引き起こすことはある

腹部の臓器は組成がよく似ているため、X線の吸収に差をつけて、良い画像を得る目的でバリウムやヨウ素を用いた密度の高い陽性造影剤を使用しますが、時にこの造影剤が過敏反応を起こします。過敏反応は造影剤注入から短時間で起こる「即時型」と、半日〜数日経って起こる「遅延型」に大別されますが、一般に過敏反応は検査中〜終了前に出現することが多いのです。
症状としては悪心、嘔吐、じんましん、呼吸困難、血圧低下、アナフィラキシーショックなどが知られており、重篤な場合は死に至ることもあります。
ご質問の方はCT検査を受けて3日後から発熱や発疹が出現したとのことですが、夏場は発熱や発疹をともなうウイルス感染症もありますので、必ずしも造影剤によるものとは断言できません。しかし、質問内容からは造影剤の関与が強く疑われますので、やはりアレルギー専門医に相談してリンパ球幼若化反応テスト(LST)など免疫学的検査を受けるべきでしょう。この検査は主に薬剤の遅延型アレルギーに対する影響を調べるもので、試験管レベルで行う「安全な人体実験」と思ってください。
急性虫垂炎が疑わしい時は、血液検査や腹部のX線写真、エコー検査などを参考にして診断しますが、女性では婦人科的な疾患との鑑別のためにCT検査が必要なこともあります。以前は検査の前に必ず造影剤のテストを行っていましたが、日本医学放射線学会から中止勧告が出されて廃止されました。ただ、造影剤を用いる場合は十分な問診テレルギー体質や甲状腺疾患の有無など)が必要であり、過敏反応を念頭に置きながら慎重に実施する必要があるのは言うまでもありません。質問者の一日も早い回復をお祈りいたしますが、診察をしていないので病気の予後やCT検査の必要性についてはコメントできません。



Q)食欲の秋なのにおいしく食事ができません。何か良い薬はありますか?

秋になると私の周りもおいしいものだらけとなります。おいしいものを食べたいと思うのですが、少しでも食事を多めにとると、吐き気や。お腹が張って苦しくなります。「天高く馬肥える秋」とまではいかなくても、人並みには食べたいなぁと考え、胃内視鏡検査を受けましたが、特に異常なしと言われました。何か良い薬はありませんか?
(32歳/女性)

A)漢方でよく使う生姜には健胃作用がある

「食欲の秋」はおいしいものでいっぱい。食欲旺盛な方は体重増加に要注意です。その反対に食べたくても食べられない・肥りたくても肥れない方にとってはつらい季節のようです。漢方ではこの原因を「脾虚(ひきょ)」と考えます。その症状には食欲不振、食後の眠気、腹部膨満感などの消化器症状と、易疲労感、寒がり、不眠など全身症状があります。これらの、脾虚症状はさまざまな漢方用語で表現されます。「翻胃(ほんい)」は胃がひっくり返るようなほど吐き気が強い状態、「そう雑・呑酸(どんさん)」は胸焼け、「痞満(ひまん)」は心下の支え、「鼓脹(こちょう)」は腹部膨満感、「泄瀉(せっしゃ)」は非細菌性下痢、「痢疾(りしつ)」は細菌性下痢を表します。
治療は、吐き気が強い「翻胃」に、五苓散(ごれいさん)や小半夏加茯苓(しょうはんげかぶくりょう)など茯苓(ぶくりょう)が入った処方、胸焼けが強い「そう雑」に二陳湯(にちんとう)、六君子湯(りっくんしとう)、平胃散(へいいさん)などの陳皮(ちんぴ)・生姜(しょうきょう)を含んだ処方、「痞満」に半夏瀉心湯・人参湯(にんじんとう)、「鼓脹」に桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)を、「泄瀉」「痢疾」に生姜を含む人参湯などを用います。
漢方薬によく用いられる生姜には健胃作用があり、料理にもよく用いられます。お寿司屋さんでは紅生姜が寿司の横に必ずつきます。これは、胃腸の働きを良くしてお寿司がたくさん売れるための工夫なのでしょうか。
そのほか、私たちのまわりには、山椒、陳皮など、薬として利用価値がある食材がたくさんあります。



Q)パーキンソン病とはどのような病気?

最近、手が小刻みに震え、体が硬くなっています。インターネットで何の病気の疑いがあるのかを検索したら、パーキンソン病などと合致しているのです。不治の病と聞いたことがあるのですが、不安で仕方ありません。これからどんどんひどくなったら、どうなってしまうのか・・・。どんな病院へ行ったら最適なのか、専門家のご意見が欲しいと切に願っています。
(62歳/男性)

A)脳内のドーパミン不足で起こる

60歳代で手の震えと体の硬さを感じたら、パーキンソン病を疑います。
パーキンソン病の震えは、安静にしている時に手や首がリズミカルに動き(静止時振戦)、物をつかんだりするときは消えます。筋肉の動きが硬く、手首などを屈伸させると、カタカタと歯車を回すようにひっかかります(歯車様筋固縮)。
顔の表情をつくる筋肉も動きが悪くなるために、表情が乏しくなります(仮面様顔貌)。そのほか、歩き始めの第一歩がなかなか出ない、その反対に止まるときにはきちんと止まれないで何かにぶつかるまで行ってしまう−などの特徴があります。
パーキンソン病の原囚は、主に脳内のドーパミンという物質の不足によって起こります。またドーパミンが働く場所が障害されても起こります。
一方、よく似た症状ですが、原因が多発性の脳梗塞などの「脳血管性パーキンソン症候群」もあります。
パーキンソン病の治療は、脳内のドーパミン濃度を増やしたり、ドーパミン受容体を刺激したりする薬剤を服用することが一般的で、最近非常に進歩しました。副作用とその対策もかなり研究されていますので、日常生活にさほど不自由ないくらいにコントロールでき、進行も止められる方が多くなっています。
「神経内科」専門医であれば、誰でもこの病気はよく診ているので、早期に受診してください。
パーキンソン病はそれ自体で死亡する原因にはならない病気ですが、往々にして神経質で考え方の固い真面目な人がなりやすく(非喫煙者がなりやすいことは有名です)、病気を深刻に考えすぎて、別の心の病気(不安神経症・うつ状態など)を合併してしまう場合があります。医師の話をよく聞いて、病気に対する不安を取り除くことが人事です。




日本医療企画「ホスピタウン」より



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